グランドスタッフ

2011年06月10日

空港の特殊車両

 
旅客機の運航を日々支えているのは、パイロットや客室乗務員、空港の旅客スタッフたちだけではありません。ある便が空港に到着し、再び出発していくまでの間には、それぞれに任務を負った多くのスペシャリストたちが活躍しています。


到着機の誘導や出発機のプッシュバック、貨物の積み降ろし、燃料補給、機内清掃など。それら旅客機がスポットに駐機中に行われる数々の作業を総称する「グランドハンドリング」という言葉を聞いたことはありませんか? 駐機するスポットによっては、グランドハンドリングの様子を空港待合室のガラス窓越しに眺めることも可能です。旅客機の周りに、お菓子に群がるアリのように集まってきて、てきぱきと任務をこなす特殊車両の活躍を追ってみるのも楽しいかも知れません。

さて、誠Styleの連載『“飛行機と空と旅”の話』で、本日より新しい記事がアップされています。5月後半は約10日間のヨーロッパ取材に出かけていたため、少し間があいてしまいました。更新はかれこれ4週間ぶりです。今回は空港のさまざまな特殊車両にスポットを当て、それぞれの任務・役割について解説しました。

≫≫≫「空港ではたらく個性豊かな“特殊車両”たち。それぞれの任務・役割は?

S.Akimoto at 08:23|Permalink

2010年10月04日

車椅子に乗せられて

 
写真の私──笑っていますが、楽しくて浮かれているのではありません。恥ずかしさを押し隠そうと、無理に笑っています。だって公共の場で、車椅子に乗せられて移動しているのですから。


場所は、ヨハネスブルグ国際空港です。クルーガー国立公園でのサファリ取材がかなりハードだったのと、日頃の不摂生がたたって、持病の関節炎が左足の膝に発症してしまいました。すべての取材を終えるまではと我慢していたら、痛みがだんだん酷くなり、帰国の日にはとうとう歩くのもままならない状態に。で、空港カウンターで往路と同じバンコク経由便のチェックインをする際に「通路側をお願いしたいのだけど、窓側の2席並びだと隣のシートの人が通路に出るときに立ち上がれそうにないから、中央の2席並びのシートにしてほしい」とリクエストしました。

するとタイ国際航空のスタッフは、親切にも窓側2席の通路側シートをとり、隣に誰も乗らないよう窓側シートをブロックしてくれたのです。そして私に「すぐに車椅子を手配するので、搭乗まで使用してください」と言いました。車椅子と聞いてさすがに固辞したのですが、スタッフは「その足で動くのは無理です」と聞いてくれません。で、情けなくも写真のような結果に。

こんな状態だからこそ見えてくる人のやさしさ、というのがあります。カウンターから私の車椅子を押してくれた空港スタッフの黒人青年は、道中気づかってずっと話しかけてくれました。膝の痛みはどう? 取材はうまくいった? 自分も将来はジャーナリストになるのが夢なんだ。日本はいい国? 行ってみたいなあ。その間、私のパスポートとボーディングパスをもって出国審査を代行し、カメラ機材やPCの入った重い荷物を抱えてセキュリティチェックを済ませてきてくれます。私自身のボディチェックも、座った状態でできるように係を車椅子まで連れてきてくれました。

搭乗ゲートに向かう途中では、歩いている人たちがみんなさっと通路を空け、私に微笑みかけてくれます。そして搭乗口では、車椅子の利用者は最優先でゲートイン。ドアにたどり着いて車椅子を降り、そこで黒人青年にお礼を言ってあとは自分で歩いて乗り込もうとすると、中から4人ものクルーが出てきてみんなで私を支えてくれました。

バンコクへ向かうTG704便がヨハネスブルグ国際空港を発ってからも、私の横を通るクルーたちがそのつど「具合はどう?」「何か要望があれば、遠慮なく言ってくださいね」などと声をかけてくれます。そしてその中の一人が、ギャレーで使うドライアイスをタオルにくるんで「これで患部を冷やされるといいですよ」と持ってきてくれました。11時間のフライト中、中身のドライアイスを何度も替えにきてくれて。おかげでバンコクに到着したときには、かなり痛みも引き、なんとか自分で歩けるまでに回復していました。

お世話になったみなさん、本当に感謝です。不摂生、少しは控えるようにします。トホホ。

S.Akimoto at 10:08|Permalink

2010年01月06日

新春セミナーのご案内

 
日系エアラインの旅客スタッフとして成田空港で働くFさんは、学生時代に留学していたアメリカ西海岸のあるテーマパークでアルバイトをしていたそうです。その当時のことを、彼女はこんなふうに話してくれました〔写真はイメージ〕。


「来園されるお客さまに、ゲートで『Enjoy!(楽しんでね)』とか『Have a nice day!(よい1日を)』とお迎えするのがとても楽しかったんです。ゲートをくぐると、この先に夢と希望がいっぱいの世界が待っていますよ──という気持ちを込めて。その体験が忘れられなくて、将来は笑顔でお客さまを出迎えたり見送ったりする仕事に就きたいと思うようになりました」

なるほど。旅客スタッフとは、新しい世界や未知なる国へ人々が気持ちよく旅立っていけるようサポートする仕事といえるかも知れません(以上は拙著『みんなが知りたい空港の疑問50』より)。空港で私たちが最初に接する旅客スタッフや、フライトで出会う客室乗務員たち。その一人ひとりが、それぞれの動機で“空の世界”を目指し、現在の仕事を手に入れました。取材で多くの人たちに話を聞いていると、エアライン業界が本当に夢のある舞台であることを実感します。

金融危機に端を発する世界同時不況の影響で現在、エアライン業界もとても厳しい状況に置かれています。が、こういう時代にこそ、各社は知恵と努力を結集して“空の旅”をより進化させていかなければなりません。そのために何よりも必要なのが「人の力」です。

そこでこの2月に、航空業界を志望する人たちに向けた新春応援セミナー『秋本塾』を、エアラインスクール「ARK ACADEMY」で開催することになりました。これまで世界の空を旅し、1,000人以上のエアライン関係者と接してきた経験をもとにこの業界の魅力と現状をお話しするとともに、サービスに当たる第一線の現場や人事担当者らの本音をお伝えするため現在さまざまな角度から最新情報の取材も進めています。

客室乗務員や旅客スタッフ、総合職としてエアラインへの就職を目指す人たちのみならず、すでに何らかの形で業界に携わっている人たちにとっても有意義な業界研究セミナーにしたいと思いますので、どうぞふるってご参加ください。詳細はこちらから。

S.Akimoto at 10:07|Permalink

2009年10月29日

雨に煙る摩天楼

 
マンハッタンは昨日も今日も雨です。でも、天気なんかに負けていられません。ニューヨーク滞在最終日となる昨夜は、初日の夜にワインバーに行った面々にANA広報の河又健尚さん、手塚愛美さんを加えたメンバーでグリニッジビレッジへ。私の気に入っているピアノのジャズライブを聴ける「KNICKERBOCKER」という店に案内し、遅くまでアメリカングリルとお酒を楽しみました〔写真〕。


部屋に帰りついたのは深夜2時過ぎで、それからほとんど寝る間もなく、今朝は7時にホテルをチェックアウト。帰りのフライトは午前11時10分発のコンチネンタル航空009便ですが、迎えの車が出発の4時間前に来ることになっているのです。さすがに早過ぎるのでは? と思ったら、案の定渋滞もなく、出発3時間前に空港に着いてしまいました。

ニューアーク空港に勤務する同社のインターナショナルコンシェルジュ・浜田久仁子さんに「到着したらオフィスに電話を」を言われていましたが、やはりまだ彼女は出社していません。電話に対応してくれた同僚というアメリカ人女性に、とりあえず搭乗手続きを済ませてラウンジに向かうと伝えてもらえるよう英語でメッセージを残しました。

専用の空港ラウンジ「プレジデントクラブ」でコーヒーを飲みながら書き物をしていたら、浜田さんは9時半過ぎに姿を現しました。

「来たばかりなのに、もう帰っちゃうんですね」と浜田さんは苦笑します。「秋本さん、まるで客室乗務員並みのフライトスケジュールですよ」
「友人のアメリカ人記者にも同じことを言われました」
「あと2日か3日滞在できるなら、夜のマンハッタンでお食事でもごいっしょしたかったのに──」
「次は、プライベートでゆっくり来ますよ」

浜田さんは出発前の機内にも来てくれて、そこでもまた少し話しました。CO009便はその後、定刻より5分遅れてニューアーク空港を離陸。上昇中のボーイング777の窓から外に目をやると、ハドソン川越しに雨に煙る摩天楼が見えます。その幻想的な風景をぼんやり眺めながら、私は「次はいつ来られるかなあ」と考えていました。

S.Akimoto at 21:06|Permalink

2009年09月24日

夢はキャビンクルー

 
恒例となった「世界旅行博'09」が先週末に東京ビッグサイトで開催され、私もエアライン各社の出展ブースを訪ねて関係者たちといろいろ意見交換をしてきました。その会場を歩きながらときどき見かけたのが、ダークスーツに身を包んだ若い人たちです。大半は女性でしたが、なかには男性の姿も。何人かに声をかけてみると、彼らの多くが「将来はエアライン業界で働くのが夢。そのための情報収集に来た」と話していました。


憧れる世界の空気を、実際に自分で肌で感じてみる──これは就職活動を進める上でとても大事なことだと私も思います。各社の出展ブースには現役の客室乗務員らも応援に駆けつけ、学生が彼女たちに積極的に質問している姿も目につきました。こういう交流の場がもっともっと増えればいいなと感じます。

私のその考えに「本当にそう思います」と同調していたのは、スカパー「旅チャンネル」の情報番組『世界のエアラインガイド』にサブコメンテーターとして参加している橋本絵里子さん。橋本さんが代表を務めるエアラインスクール「ARK ACADEMY」では、2003年より「クルーパーティ」と銘打ち、客室乗務員をはじめ航空業界を志望する若い人たちと国内外のエアラインで活躍中の現役クルーたちとの“ふれあいの場”を提供してきました。

「エアライン業界に入って何が一番よかったと思いますか?」
「客室乗務員に求められている資質とは?」
「目標に到達するには、どんな準備が必要でしょう?」

空の仕事を夢見る人たちからの質問に、現役クルーが自身の体験を振り返りながら答え、毎回とても有意義な催しになっていると聞きます〔写真〕。そのクルーパーティが今年は10月3日(土)に開催され、今回は私も特別ゲストとして出席することになりました。

当日はスクール代表の橋本さんのインタビューを受けたあと、参加者との質疑応答も予定しています。どんな質問が投げられるか、いまからとても楽しみ。世界の空を旅し、1,000人以上のエアライン関係者と接してきた経験から、すべてをお話しするつもりです。その結果、エアライン業界の仕事にますます夢を膨らませてくれると嬉しいですね。参加方法などの詳細は、同校ホームページで。

S.Akimoto at 12:02|Permalink

2007年08月06日

飛行機を誘導する人

 
「娘が突然、どうしても空港で働きたいと言い出して──」と、高校3年生の女の子を持つ知人から相談を受けました。「空港での仕事にもいろいろあるだろうと言って、詳しく話を聞いてみたら、どうもメガホンみたいなのを持って飛行機を誘導する人になりたいみたいなんだ」


ははん、マーシャラーか。空港での数あるグランドハンドリング業務の中でも、マーシャラーは“花形職種”の一つ。到着した旅客機を滑走路からスポットへ巧みに導いていく姿に憧れる人は少なくないようですね。パドルを手にしての基本動作や、実機との距離をつかむ感覚など、特殊技能が要求される仕事です。マーシャリングカーについている台の上の高さは、最高で約4メートル〔写真 ©Yoshiyuki Oguri〕。雨の日の風の日もしっかりと足をふんばって、向かってくる旅客機に正確に合図を送らなければなりません。

「現場に出て1年近くが経ちますが、毎回毎回、緊張の連続ですよ」と、前に羽田空港で取材した若いマーシャラーが言っていました。「初めて一人でマーシャリングを担当したときは、先輩たちが心配そうに見守ってくれるなか、あまりの不安と緊張で頭の中が真っ白になりました」

その話を知人にすると、彼は「やっぱり女の子には無理だよな」と言うので、慌ててつけ加えました。マーシャラーは男職場のように見えるけど、最近は女性の進出も目立ち、多くの女性マーシャラーが各地の空港で活躍しているよ──と。マーシャラーになるには空港サービス科のある専門学校などを卒業し、グランドハンドリング会社に入社後するのが一般的です。やりがいのある仕事だけに、ぜひ頑張って夢をかなえてほしいですね。取材した若手マーシャラーが言っていた次のひと言が、いまも記憶に焼きついています。

「思うようにできるまでは大変ですが、自分が描いたラインのイメージ通りに誘導できたときの機体との一体感は、ほかの仕事ではまず味わえません。最高です!」

S.Akimoto at 21:47|Permalink

2006年12月26日

通路側は3人席より4人席

 
成田空港出発ロビーのチェックインカウンターでのことです。ヨーロッパ系エアラインでグランドスタッフとして働く知人を見かけたので、声をかけようとしたら、何やら乗客の一人ともめている様子。事が収まるのを待って近寄ってみると、彼女は「エコノミークラスの座席のことでお客さまに苦情を言われまして……」と話してくれました。


ボーイング747-400でヨーロッパに向かうその便のエコノミークラスは、“3─4─3”というごく一般的なシートレイアウト。珍しくその便に限って窓側席から埋まっていたので、当の乗客には空いている中央4列の通路側席を割り当てたらしい。ところが、もともと窓側席が好きだったその乗客は「通路側しかないのなら、せめて3人席を割り当てろ! 希望も聞かずに黙って4人席にするなど、失礼だ!」と怒ったそうです。

「通路側なら、4人席のほうが絶対におすすめなんですけどね」

そう彼女は言います。たしかにそう。一般に通路側が人気の理由は、トイレなどに立つときに人を気づかう必要がなく、いつでも自由に通路に出られる点です。しかし欠点は、窓側の人が立つときには自分も立ち上がって通してやらなければならないこと。当然、他人のために席を立つ回数は、少ないに越したことはありません。

ここで、4人席と3人席を比較して考えてみましょう。4人席のほうが3人席に比べて人数が多いぶん、煩わしそうに思われがちです。しかし3人席の通路側は、窓側の人と中央席の人と、2人が通路に出るときに席を立たなければなりません。それが4人席だと、両側に通路があるので、隣の人が立ったときだけ自分が立てばいいことになります。つまりヨーロッパまで約10時間のフライト中に、3人席の通路側で10回席を立たなければならないとすれば、4人席なら半分の5回で済むことになる。“快適性”という意味で言えば、これは雲泥の差です!

「お客さまにそのことをちゃんと説明しようとしたんですが……」と彼女は言います。「でも、あまりに怒ってらっしゃるので、面倒臭くなってやめました。ご要望どおり、3人席に変えてさしあげましたよ」

みなさん、通路側の場合は3人席より4人席! シート選びの参考にしてみてください。

S.Akimoto at 22:10|Permalink
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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