航空エンジニア

2014年06月28日

LCCの安全基準

 
国土交通省は昨日、エアラインパイロットの年齢制限を現在の64歳から1〜2年程度延ばす案を示しました。運航中止が相次いでいる国内LCCのパイロット不足の解消が目的のようです。私もいくつかのメディアでLCCの独自体質や弱点について伝えてきましたが、一番大切な「安全面」でいうと、この国交省案はどうなのでしょうか? 気になるところです。


LCCの安全性については、不安を抱いている利用者も少なくありません。「効率性を何よりも重視するLCCは航空機の整備のやり方も大手とは違うのか?」といった質問が、ときどき私のもとにも寄せられます。“安かろう、悪かろう”というイメージがどうしてもLCCにはつきまとうのでしょう。しかし結論から言うと、航空機の基本的な整備手法は、LCCも大手も変わらない。LCCだけの安全基準など、当然のことながら存在しません。そのことを具体的に取材・レポートするメディアがほぼ皆無なので、誠Styleの連載『“飛行機と空と旅”の話』で書くことにしました。

航空機の整備は、各社とも航空機メーカーが作成したメンテナンスマニュアルに沿い、日本の航空法に則って実施します。このレポートを書くために取材したジェットスター・ジャパンの整備セクションのリーダーも「メーカーのプログラムを足しもせず、引きもせず──それが基本ですよ」と話していました。同社が運航するのは、LCCの“定番”であるエアバスA320。つまり彼の言う「メーカー」とは、エアバス社のことです。私が成田空港にある同社の整備現場を訪ねたとき、若手を含めた整備士たちがちょうど折り返し便のメンテナンス作業に当たっていた。

彼らの生の声も交えながら、LCCの整備についてできるだけわかりやすく書きましたので、興味のある方はぜひ以下からアクセスしてみてください。

≫≫≫「LCCの安全基準や航空機の整備手順は、大手とどう違うのか?

S.Akimoto at 07:38|Permalink

2013年12月18日

明日天気にな〜れ

 
原稿書きに追われながら、天気予報との睨めっこが続いています。現在強めに降っている雨は、深夜にはみぞれに。ただ、最新情報だと雪にはならないというので、少しホッとしました。雨は明日の夕方まで止まないみたいですが。


博多での撮影&リサーチを終えて昨日帰京し、今週の残りは羽田と成田でエアラインの整備現場の取材が中心になります。今日はANAの退役を間近に控えたボーイング747のベテラン整備士(一等航空整備士)のインタビューが羽田でありました。技術の現場に従事する人たちの話というのは、いつ聞いても面白い。私ももともとエンジニア志望で、それが叶わなかった経緯もあって、ちょっぴり嫉妬しながら彼の人生について思いを馳せました。

さて、天気が気になるのは、明日の午前中から成田のランプエリアでジェットスター・ジャパンのライン整備取材があるからです。航空写真家のチャーリィ古庄氏をともなっての現場撮影がメインで、背景が大雨というのでは話になりません。同行する編集担当に「どうしよう?」と相談したら、彼女は「雨の日でも風の日でもしっかり整備をしていることを伝えるのも大事です」と前向きな返答。私も、そのとおりだと思いました。

でもでも、雨の中で取材するのは、イヤだなあ。寒いしね(笑)。で、苦しまぎれに先ほど、古庄氏にこんなメールを送ってしまいました──「何とか天気にしてくれよ。プロの写真家にとっては、空を晴らすのも“実力”のうちだろ」と。相手にしてみれば、単なる言いがかりですね。ごめんね、チャーリィ。

S.Akimoto at 23:18|Permalink

2011年08月31日

5年後の現場を歩く

 
ハンブルグ空港に隣接するルフトハンザの技術拠点、ルフトハンザテクニックを訪ねました。同社は1994年にグループの一翼を担う会社としてルフトハンザから独立。ルフトハンザに限らず欧米やアジアのエアライン各社から航空機のMRO(メンテナンス、リペア、オーバーホール)を請け負う世界最大の民間航空エンジニアリングサービス会社として活動を続けています。


オフィス棟に案内されると、広報部長のベルンド・ハベルさんが私を出迎えてくれました。5年前に来たときと同じように。

「もう5年に? そんなに経つんですね。お会いしたのはついこないだのようなのに。じゃあ、この建物も懐かしいでしょう」とハベルさんは言います。「間もなくもう一人、懐かしい人間が顔を出しますよ」

え、もしかして。そう思って期待していたら、遅れて部屋に入ってきたのは5年前に丸一日かけて機体メンテナンスの現場を案内してくれた広報担当のトーマス・ウェスファルさん〔写真〕でした。

「お元気ですか?」と、ウェスファルさんは日本語で言って手を差し出します。「いらっしゃると聞いて、ずっと楽しみに待ってたんですよ」
「久しぶり、トーマス! 私のこと、覚えていてくれたんだ」
「当たり前ですよ。ここには世界中からいろんな人が訪ねてきますが、とくに日本の友人のことは忘れません」

ウェスファルさんはかつて、神戸大学で経済を学んでいたことがあります。今回会って、得意の日本語にますます磨きがかかっていることを感じました。5年前の取材ノートを見ると、そのときに彼から説明を受けたことが細かく記されています。当時すでに、世界の600社から1,200機の機体やエンジンの整備を委託していたルフトハンザテクニック。その顧客数が現在は750社、2,000機にまで膨れ上がっているそうです。いずれ詳しくレポートしますが、“5年後の現場”を再び彼に案内してもらいました。

S.Akimoto at 12:41|Permalink

2011年08月22日

87番ゲート前から

 
成田空港第2ターミナルの87番ゲート前にいます。早朝の京成スカイライナーで先ほど到着しました。現在の気温は25度弱。Tシャツ姿の旅行者が目立った先週までとは打って変わり、長袖の上着をはおった人たちが少なくありません。猛暑が続いた日本列島に週末に秋雨前線が降りてきて、季節がいきなり変わりました。さて、今朝はお知らせが三つあります。


航空写真家のチャーリィ古庄氏ととも毎日新聞社の取材を受けたことは8月10日のBlogで報告しました。その記事が本日の夕刊の「人模様」というコラムに掲載されます。企画もののコーナーは大きな事件があると掲載が急きょ先送りになるケースもあるそうですが、何もなければ二人で紙面に登場するはずですので、ご覧になってみてください。

お知らせの二つ目は、誠Styleの連載『“飛行機と空と旅”の話』の更新について。報告が遅れましたが、先週金曜日から新しい記事が公開されています。「旅客機の整備の話」というタイトルで、日々の“空の安全”がどう守られているかをレポートしました。

旅客機の整備には、機体をハンガーに搬入して本格的に点検・修理を進める「ドック整備」のほかに、毎回のフライトごとに空港のランプエリアで実施する「ライン整備」があります。ちょうどいま、目の前のゲートから見える機体も、出発前のライン整備を終えました〔写真〕。もう間もなく乗客の搭乗が始まり、私もいまからこれに乗って目的地へ向かいます。これがお知らせの三つ目です。

利用するのはベトナム航空のVN951便──成田を10時に発つホーチミン行きです。深みのあるブルーグリーンに塗装された機体を見て、すぐに「ベトナム航空だ!」とわかった人もいるかも知れません。6時間のフライトで現地に到着後、国内線に乗り継いで中部の都市ダナンへ。これから約1週間、ベトナム中部のいくつかの街に滞在します。その報告は、また現地から。

≫≫≫「旅客機の整備の話。“空の安全”はどう守られている?

S.Akimoto at 09:06|Permalink

2008年09月08日

廃棄部品のオーケストラ

 
新しい部品との交換作業が終わり、あとは廃棄されるのを待つだけになった古いエンジン部品。それをじっと眺めながら、JALのベテラン整備士Sさんは考えました。ジャンボ機の重要な一部としてずっと頑張ってきてくれたこのパーツに、何とかもう一度生命を吹き込んでやることはできないものか──と。


そうしてSさんが専門とする溶接技術を駆使して完成させたのが、これです〔写真〕。取り外された古いエンジンブレードなどでつくった、メタル製のオーケストラ人形。今日の昼間、取材で成田空港に隣接するJALのエンジン整備工場を訪ねたとき、入口を入ったところのロビーに飾ってありました。

オーケストラ人形は、トロンボーン、サックス、ベース、ピアノ、バイオリン、フルートなどのパートにきちんと分かれています。それぞれの胴体部分は耐熱合金製エンジン部品で、頭部にはベアリングを、足にはボルトを使って接合しました。奏者たちが乗っている台は、回転部分を扇形に切ってつくったタービンブレードです。作者の柔軟な発想と感性がうかがえますね。

旅客機のジェットエンジンは、その可動部分のほとんどが消耗品です。定期点検でほんのわずかでも亀裂などが見つかれば、すぐに交換しなければなりません。しかし、それらはチタンなどでつくられていて、一つひとつがとての高価。ジャンボ機とともに長年歩んできたSさんにとっては、たとえ古くなっても愛着があり、そのまま廃棄するのは忍びなかったのでしょう。

完成したオーケストラ人形は現在、JALグループの機内通販などで一般向けにも販売されています。一つひとつをハンドメイドで仕上げるため、20万円(5体セット)〜30万円(8体セット)とちょっぴり高価ですが。

S.Akimoto at 23:11|Permalink

2007年08月25日

そんなことが起こるの?

 
ちょっと意外でしたが、そうですか──外れたボルトが原因でしたか。しかし国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会の報告を聞いて、そんなことが現実に起こるのか、というのが正直な感想です。


燃料漏れを引き起こした金属製ボルトは、「ワッシャー」と呼ばれる留め具などが外れていたために脱落し燃料タンクに突き刺さっていたといいます。テレビのコメンテーターが「燃料タンクはそんなに簡単に穴が開いてしまうものなのか?」と言っていましたが、ボルトはアルミ製の燃料タンクより硬い鉄でできているので、スラット収納時にそれが強い力で押し込まれれば、簡単に破れてしまうでしょうね。ちなみにスラットは「高揚力装置」と呼ばれ、通常は主翼の前縁に収まっていますが、離着陸時に主翼で得る揚力を高めるためにアームで前側に押し出されます〔写真〕。そのスラットが格納される際に、外れたボルトがいっしょに押し込まれて燃料タンクの壁を破ってしまったようです。

問題は、なぜボルトが外れたかということですね。整備士に聞いても、こ部分のボルトは通常の点検整備ではもちろん、何年かに1度の大規模な整備でも外したり着けたりすることがない部品。しかし今回の国交省の調査によると、ワッシャーが外れたボルトは穴に差し込んであっただけで、固定されていなかったことになります。機体整備時に金具をつけ忘れるミスがあり、そのまま運航を続けて徐々に抜けていったということなのでしょうか。いずれにしても、徹底した原因究明が必要ですね。

さて、先日のBlogで予告したように、今回のチャイナエアラインの炎上事故にからめた記事を、All About『世界のエアライン』に昨日アップしました。こちらは一般的な旅客機の仕組みや保安に関するルールについて解説したものなので、気軽な気持ちで読んでみてください。

≫≫≫「中華航空機炎上でわかった旅客機のヒミツ

S.Akimoto at 09:35|Permalink

2006年11月28日

“安全世界一”の舞台裏

 
『Newsweek』誌の日本版で今年2月、航空会社の“安全度ランキング”が発表されました。世界180カ国、900社以上の安全性を評価している英航空コンサルタント会社のデータベースから、同誌が主要なエアライン284社のデータを抽出。過去12年間の事故件数と10項目の重要指数をもとに安全性に関する順位づけを行ったものです。


その安全ランキングで「世界一安全なエアライン」に選ばれたのが、ルフトハンザでした。

ドイツといえば、頑固な“職人の国”というイメージがあります。ルフトハンザが世界一の安全性を実現した背景には、この国の“職人”たちのどんな取り組みがあるのか? いつかきちんと舞台裏を取材してみたい──そんな思いを、私はずっと抱き続けてきました。

その希望が今年10月に実現し、同エアラインの機体メンテナンスを一手に担うグループ会社、ルフトハンザテクニックの本部があるドイツ・ハンブルグへ。「安全と技術」という難しいテーマでしたが、関係者のみなさんの協力もあり、とても有意義な取材ができました。

本日、All About『世界のエアライン』に、“世界の個性派エアライン”シリーズの最新レポートとして「職人の国の“世界一安全”なエアライン」と題する記事をアップしました。計5ページにわたる長文ですが、時間のあるときにでもぜひご一読を!

≫≫≫「職人の国の“世界一安全”なエアライン

S.Akimoto at 22:55|Permalink

2006年08月31日

鉄道技術者と航空整備士

 
朝7時過ぎの新幹線のぞみで名古屋へ行き、そこから特急しなのに乗り換えて岐阜県の多治見へ。JR東海が発行するPR誌の取材で、中央本線の一定区間の電力設備保守を管轄する多治見電力区を訪ねました。


取材と撮影に協力してくれたのは、電気系エンジニアのKさん〔写真〕。2005年に新卒で入社した若手です。最初はやや緊張気味だったものの、すぐに気持ちがほぐれ、自身の仕事や役割についていろいろ話してくれました。

鉄道は電気で動いています。その電気の供給がストップすれば、当然列車は止まってしまう。営業運転の合間を縫って送電設備などを検査し、不具合が見つかれば、ときには夜を徹してでも速やかに補修しなければなりません。そうした設備の検査や補修工事を取り仕切るのが、Kさんらの仕事です。

私たち利用者の目にはあまり触れない、地道な仕事ですね? そう話を向けると「目立たなくていいんです。日々何もなく、平常どおりに列車が運行されて利用者のみなさんに迷惑がかからなければ、それでいい。私たちが表面に出るとしたら、それはきっと電車が止まるなど何かトラブルがあったときでしょうから」とKさん。縁の下の力持ちとしての仕事にやりがいを感じている、という一言に、鉄道マンの誇りとエンジニア魂を感じました。

空港やドックで日々汗を流す飛行機の整備士たちも、やっぱり同じような気持ちなのでしょう。彼らも、鉄道マンに負けないくらいのプライドと使命感をもって安全な空の旅を支えてくれている──そう信じたいですね。

さて、せっかくここまで来たのだから、ついでに飛騨高山あたりまで足を伸ばしてゆっくり温泉にでも……。そう思ったのですが、今日は夕方から渋谷の酣燈(かんとう)社で『月刊・航空情報』編集部との打ち合せが。多治見でのインタビュー後、撮影に途中まで立ち会い、うしろ髪を引かれる思いで東京に引き返しました。高山には、秋の紅葉シーズンにでもゆっくり来ようかな。

S.Akimoto at 22:10|Permalink

2006年08月02日

JALのフライトエンジニア

 
ボーイング747のフライトエンジニア(航空機関士)としてJALに勤務する上田哲也さん〔写真〕に、今日の午後お会いしました。


上田さんには、計1万2,000時間以上の飛行キャリアをもつベテランクルーとしての顏のほかにもう一つ、ポップアートを手がける画家としての顏があります。手がけた作品は「リチャード・カイ」のペンネームで発表。中でも代表的なものが、世界中の街の風景をコクピットを通して描いたアート集です。

「世界中の空から見た感動を多くの人に伝えたくてね。フライトで海外へ行くと、ステイ先で時間がありますでしょう。その時間を使ってスケッチを始めるようになりました」

絵を描くようになったきっかけを、上田さんはそう話します。フライトを終え、ステイ先のホテルに着くと、上田さんが真っ先にとる行動はスケッチブックの新しいページを広げること。その日の感動が消えないうちに書き写し、そのスケッチを持ち帰って自宅のアトリエで幻想的な作品に仕上げていきます。

しかしそんな上田さんにも、一つだけ悩みが。“ハイテクジャンボ”と言われるボーイング747-400の登場以来、コクピットには機長と副操縦士のみの「2人乗務」体制が主流になりました。今年7月までの約1年間はグループ会社の日本アジア航空に出向して台北線などにも乗務しましたが、フライトエンジニアとしての仕事は確実に減りつつあるといいます。

飛行機に憧れ、絵を描くことも大好きだったという少年時代。「航空大学に進学してパイロットに」という夢は家庭の事情で断念したものの、しかし飛行機に関わる仕事に就きたいという気持ちは変わらず、上田さんは高校を卒業後メカニックとしてJALに入社しました。その後、整備の現場で働きながら夜間大学に通って猛勉強を続け、社内のフライトエンジニア登用試験に合格し「空の仕事」を手に入れます。

「今後、ですか? さあ、先のことはまだわかりません。海外の航空会社でフライトエンジニアとしての仕事があれば、そこに移るかも知れませんね。昨今は2名乗務が主流になっていますが、私自身はいまでもフライトエンジニアは必要だと思っています。絵を描くことの前に、まず私の原点である“空を飛ぶ”という夢を完遂したいんですよ」

頑張ってほしいですね。そんな上田さんを応援する意味でも、運営するAll About『世界のエアライン』で近々、上田さんの作品を集めたWeb上展覧会を開催する予定です。請うご期待!

S.Akimoto at 21:45|Permalink
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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