2019年09月18日

日本のローカル航空

 
奥尻島に飛んでみようか? 用事を済ませた北海道の函館でふとそう思い立ったのは、2019年3月の初めでした。羽田への便を急きょキャンセルして、奥尻へ向かう北海道エアシステムの小型プロペラ機サーブ340Bに乗り込みます。函館/奥尻線は1日1往復での運航ですが、定員の36席がすべて埋まるというケースはほとんどありません。それでも採算ぎりぎりで飛ばし続けているのは、この路線が地域の人々の大切な生活インフラでもあるからです。

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奥尻島は1993年7月の北海道南西沖地震で大きな被害を受けました。島へは江差港などから船も出ていますが、急を要する物資輸送などの面で空の交通は欠かせません。かつては日本国内航空やエアー北海道が同じ函館からの便を運航していましたが、採算が合わずに撤退。現在は北海道エアシステムがそれを引き継いでいます。

こういう路線はもちろん、函館/奥尻だけではありません。奥尻への旅は、頑張っている地域航空が日本の各地にあることを私にあらためて思い出させてくれました。そうして半年におよぶ「日本のローカル航空」をテーマにした取材がスタートしたのです。

札幌の新千歳からは最果ての利尻へ飛び、丘珠からは津軽海峡を越えて三沢へ。東京の調布飛行場から伊豆諸島へ19人乗りの超小型プロペラ機ドルニエ228で飛んだ情緒たっぷりのフライトもいい思い出です。離島などへの路線網が張りめぐらされている九州・沖縄エリアでの取材にも、多くの時間をかけました。大阪(伊丹)から熊本を経由して天草に向かう機窓から見た瀬戸内海や阿蘇の絶景は、忘れられません。長崎からは玄界灘に浮かぶ壱岐へ、那覇からは台湾に近い日本最西端の島、与那国島へも飛びました。

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さて、夏が終わろうとしているいま、私はふたたび奥尻島にやってきました。西側の海岸線に立ち、オクシリブルーの海を眺めながら、この半年間の取材で体験したフライトや出会った人たちのことを一つひとつ思い出しています。そして、その成果が『日本のローカル航空』(河出書房新社)という一冊にまとまりました。来週から全国の書店にならびます。ページを開いて、気になった航空会社や路線があれば、ぜひそこから小さな旅を始めてみてください。大型ジェット機で欧米などへ向かう豪華フライトとはまたひと味もふた味も違った、人間味のあふれる手づくりの取り組みに新しい楽しさを発見してもらえるはずです。

S.Akimoto at 12:46│日本のエアライン | 国内の旅
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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