2019年06月11日

空間識失調

 
航空自衛隊三沢基地所属の最新鋭ステルス戦闘機F35A〔写真〕が今年の4月9日夜に青森県沖で墜落した事故について、防衛省は一昨日、パイロットが平衡感覚を失う「空間識失調(バーティゴ)」に陥った可能性が高いとの調査結果を公表しました。空間識失調とは、具体的にはパイロットがどのような状況になることを言うのでしょうか。

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私の親友である『毎日新聞』の記者、黒川将光さんが以前、空自松島基地にある最先端の訓練用フライト・シミュレーターで自身が実体験したバーティゴについて報告しています。この記事が、じつにリアルでおもしろい。いろいろ勉強にもなりました。

黒川さんはジェット練習機T2の操縦席に座り、隣の教官とともにスクリーンに映し出された先行する隊長機を追いかけます。雲の中をしばらく飛行したあとで雲の上に出ると、斜め上の方向から太陽の光が。「機はいまどんな状況ですか?」という教官の問いに「右に傾いています」と黒川さんは答えると、教官は「計器を見るように」と指示しました。機体の姿勢を示す計器は狄緤伸瓩鮖悗靴討い燭修Δ任后B海い涜眥控,箸箸發傍淦回が始まり、教官の「頭を左右に傾けてください」という指示に従うと黒川さんは突然、異様な感覚に襲われました。右に頭を傾けると左に滑り落ちる感じを受け、逆に左に傾けると今度は上に上がるような感覚に陥ったといいます。まるで酒に酔ったように。このときも計器は狄緤伸瓩如機体は実際にはまったく傾いていません。

教官の説明によると、これは「水平線誤認錯覚」と「太陽光による錯覚」の組み合わせ。人間は太陽の光が来る方向を上に、また雲は斜めにあっても水平と勘違いしやすいための現象だそうです。ほかに漁火(いさりび)と星を混同して上下感覚を失うことなどもあるのだとか。空間識失調から抜け出すための重要な方法は「計器をまず信頼する」ことであり、黒川さんは自身の記事を「どこまで自分を信じ、どこから機械を信じるか。機械に囲まれた我々の生活にも通じる問題だ」と締めていました。

S.Akimoto at 17:13│国内トピックス 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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