2018年07月05日

天草・津紀行

 
津は、小さな町です。民家が建ちならぶ小路を進んでいくと、別次元の世界に入ったよう。歩いている私の横を、宅配便の軽四輪車両が遠慮がちにすり抜けていきます。その先に教会が見えました。400年以上前にこの地にキリスト教が伝えられたときから、時間が止まってしまったような光景です。

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「教会というと小高い丘とかに建つものが多いので、珍しくないですか?」と、案内役を買ってでてくうれた現地ボランティアガイドの森田哲雄さん(75)が言います。「ユニークな立地から“海の天主堂”とも呼ばれているんですよ」

由来記によると、教会は1569(永禄12)年にルイス・デ・アルメイダ神により建てられ、ここを中心に天草にキリスト教が栄えました。その後、1638(寛永15)年に禁教令が施行されると、津では激しい迫害の嵐が吹きあれます。教徒たちは隠れキリシタンとなって真夜中にひっそり集まっては神を礼拝し、祈り続けたらしい。1872(明治5)年にキリシタン禁制が廃止され、240年ぶりに津に着任した新しい神父は、人々から熱烈な歓迎をうけました。教会は明治以来3度建て直され、現在のゴジック風建築はフランス人のハルブ神父が1934(昭和9)年に改築したものです。内部が畳敷きというのも、教会では珍しい。津に住むキリシタン信者たちの祈りの家として、いまも毎日のように人が集まってきます。

教会をあとにし、道幅1メートルほどの「トウヤ」と呼ばれる海へ続く路地を進みます。洋角湾に出ました。過去に激しい弾圧があったのが嘘のような、穏やかな海です。地元の人なのでしょう、海に突き出た小さな木の桟橋で老人が二人、のんびりと釣り糸を垂れていました。そんな光景に目を向け、森田さんが「ご覧のように静かな集落ですが、来年のいまごろは観光客がどっと増えているかもしれませんね」と複雑そうな心境を表情ににじませます。ここがユネスコの世界遺産の候補になっていたからです。ユネスコ世界遺産委員会は6月30日、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を世界文化遺産に登録すると発表しました。

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Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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