2017年09月05日

想定外の飛行ルート

 
東京からヨーロッパへ飛ぶ場合、離陸後に北上して新潟上空から日本海に抜け、ロシアに入るのが一般的なルートです。しかし、同じ目的地に向かうにしても毎回必ずひとつのルートで飛ぶとは限りません。あらかじめ複数のルートが設定されていて、日々のフライトでは、気流や風向きなどの気象状況を考慮し最も短い時間で効率よく飛べるルートが選択されます。なので、飛ぶルートが多少変わっても私にとっては想定内ですが、今日だけは「想定外」のことが起りました。

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最新鋭のエアバスA350で運航しているフィンエアーのヘルシンキ行きAY072便は、定刻の9時50分に成田を出発しました。シートに備えつけのパーソナルモニターに、いつものように飛行ルートマップを表示させます〔写真上〕。東北の上空を真っすぐに北上し、そろそろ左旋回して西側(新潟方面)に針路を切り替えるのかなと思って見ていましたが、そうではありません。072便はその後も北上を続け、青森県の津軽上空を飛行し北海道に入りました。

どこへ向かうのだろう? この路線は過去に数えきれないほど利用していますが、こんなルートを飛ぶのは初めてです。モニターに映し出されるルートマップを確認しながら機窓からの景色を眺めていると、072便は室蘭上空を通過し、やがて北海道最北端の稚内にさしかかりました〔写真下〕。稚内に降り立つことはあっても、左手に利尻島を見ながら通過していく機会などまずありません。

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これ、もしかして……。ふと思い立ち、フィンランド人のチーフパーサーに訊いてみると、彼女は「おそらく間違いありません」とうなずきました。そうなのです。北朝鮮のミサイル実験のリスクを回避するための飛行ルートです。日本海を抜けるより、オホーツク海に出たほうがリスクが少ないという機長の判断なのでしょう。北朝鮮が繰り返している愚行は報道されているとおりですが、めったに見られない上空からの景色に遭遇し、私はつい「金正恩、おまえのおかげだよ」と呟いてしまいました。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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