2017年08月09日

映画『アフターマス』

 
ドイツ南部ユーバーリンゲン付近の上空で2002年7月、ロシアのバシキール航空の2937便と国際貨物航空DHLの611便が空中衝突し、両機の乗客乗員合71名が死亡する事故が起きました。「ユーバーリンゲン空中衝突事故」として伝えられる悲劇です。

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飛行機のコクピットには「TCAS(ティーキャス)」という機器が装備されています。半径28キロ、高度差約2700メートルの範囲を飛ぶ飛行機の存在を知らせてくれる、いわば空中衝突防止装置。2機が近づいて危険だと判断すると「トラフィック、トラフィック」と危険信号を出し、一方の飛行機には「クライム(上昇せよ)」と音声で知らせ、もう一方には「ディセンド(降下せよ)」と指示を出します。これについては近著『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(河出書房新社・KAWADE夢文庫)でも書きました。

さて、ユーバーリンゲンの事故でも、衝突の数十秒前に2937便と611便の双方のTCASがそれぞれの機影をとらえていました。611便のTCASは乗員に降下を、2937便では上昇を指示します。ところが、両機が同高度で接近していることに気づいた管制官は、2937便に降下を指示。2937便のパイロットは管制官に従っての降下を開始してしまうのです。警報が鳴り止まない611便は「TCASの指示どおり緊急降下中」と管制に通報しようとするも、うまく伝わりません。本来は2名体制で行うはずの地上の管制業務が、1名が休憩で離席していて対応がおろそかになったというのが事故要因のひとつだったようです。

昨日の夕刻、今年9月16日より日本でも公開になる映画『アフターマス』の試写会に行ってきました〔上の写真〕。上記の「ユーバーリンゲン空中衝突事故」をモデルにした映画で、内容は事故で妻子を失ったアーノルド・シュワルツネッガー演じる男が、ミスを詫びようとしない管制官を追いつめていく復讐劇。賛否はあると思いますが、いろいろ考えさせられる作品でした。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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