2017年07月15日
中国の春
この文章を書きながら、2013年秋にニューヨークのマンハッタンで見かけた一人の女性の姿を思い出しています。その女性とは、中国の民主化運動をリードしてきた王炳章氏の娘、王天安さん(当時24歳)。タイムズスクエアの一角で牢獄を形どった檻に閉じこもり、中国で10年以上も投獄されたままの父親の釈放を訴えて抗議をつづけていました〔写真〕。
王炳章氏は雑誌『中国の春』の創刊者で、2002年に中国南部で拘束され暗黒裁判において終身刑の判決を受けました。その王氏が始めた「中国の春」運動に参加したのが、投獄された状態でノーベル平和賞を受賞した人権活動家の劉暁波(リウシアオポー)氏です。7月13日の夕方、日本でも「劉暁波氏が死去」のニュースが速報で流れました。
劉氏は今年6月に末期の肝臓がんと判明し、刑務所外の同市の病院で治療を受けていたそうです。本人は国外での治療を受けることを求め、ドイツと米国が応じる姿勢を示していたのに、中国政府は最後まで出国を認めませんでした。刑務所外の病院とはいえ、事実上の獄死と言えるでしょう。
劉氏は北京師範大講師だった1989年、北京で学生らが民主化を求めた「天安門事件」でデモに加わり、反革命罪で投獄されました。日本では天安門事件があったことすら知らない世代が増えつつあるなか、劉氏の死去のニュースは、遠く離れた地でいまも父親の釈放と中国の民主化を訴えつづける王天安さんの耳にどう届いたでしょうか。
S.Akimoto at 13:23│マイ・オピニオン