2016年03月21日

開花宣言

 
靖国神社のサクラの標本木に花が開いているのが観測され、気象庁は東京に「開花宣言」を出しました。私の拠点「雲の上の書斎」から近い上野恩賜公園も、3連休最後の今日は春の便りにさそわれて多くの人たちで賑わっています。次の週末は、サクラの下で恒例のどんちゃん騒ぎ大宴会があちこちで繰り広げられるのでしょう。


子供の手を引いた家族連れも多く、上野動物園のメインゲート前も長い行列ができています〔写真〕。動物園にくるといつも思い出すのが、終戦後にここで飼育係として働いていた西山登志雄さんの、仕事中にペリカンを逃がしてしまったときのエピソードです。西山さんは2006年に亡くなるまで東武動物公園の「カバ園長」の愛称で親しまれた方で、ご存知の人も多いかもしれません。

西山さんは当時、飼育していたペリカンをうっかり逃がしてしまったとき、飛んでいくペリカンを見ながら「すげえなあ!」と感嘆の声を漏らしたそうです。鳥というのは大空を飛んでいるときこそ本当に姿で、動物園の檻の中にいるものではない。あとで園長にたっぷり叱られるのを覚悟しながら、逃げたペリカンに向かって彼は心の中で呟きました──「おれはいいんだ。おまえさん、もう戻ってくるなよ」と。

散歩ついで動物園を覗いてみようかなとも思いましたが、今日の混雑ぶりは半端ではありません。入場券を買うだけで時間がかかりそうなのでやめました。人影のまばらな平日にでも、また出直してこようと思います。平日といえば、前に来たときもその前のときも、園内でサラリーマン風の人をよく見かけました。スーツ姿の男が、檻の前で一人でじっと立ちつくしている。あれはいったい、何だったのでしょう。みんな、いろいろ抱え込んでいるのかな。

S.Akimoto at 13:50│湯島だより | オフタイム
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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