2015年12月12日

博多旅情

 
海外の多くのエアラインが最近、九州の福岡に注目しているようです。これまで韓国や中国、台湾、フィリピン、ベトナムなどアジア各都市からの便が就航。2016年3月からのマカオ航空の定期便乗り入れも発表されました。太平洋路線ではホノルル線やグアム線が定着していますし、ヨーロッパでもKLMオランダ航空のアムステルダム線に続き、フィンエアーも2016年夏ダイヤからの福岡線開設を目指して準備を進めています。


海外の知人たちからも「福岡大好き」とよく言われます。「ほら、これこれ」と、博多の屋台で撮った写真を見せてくれる人たちも少なくありません。屋台で飲み食いした体験はとくに強く彼らの思い出に残るようで、9月に香港で会った友人は「今年だけで3回、屋台でごはんを食べた」と話していました。

屋台──いいですね。博多の屋台には、独特な情緒があります。それについては何年か前に、あるメディアにこんなエッセイを寄せました。少し長いので、一部抜粋します。改めて読み返してみたら、私もまたすぐにでも行きたくなりました。

          ◇         ◇

 日が落ちて夜の街がざわつきはじめた頃を見計らって、宿泊しているホテルから中洲・春吉橋の周辺あたりに繰り出す。屋台が最も多く出ているエリアだ。込んでいる屋台でも、私一人なら大丈夫。店主が他の客の腰を少しずつずらして、うまい具合に“空き”をつくってくれる。
 カップルがいる。三人連れのグループもいる。年配の男女に若者が一人という不思議な組み合わせも珍しくない。趣味のこと、会社のこと、家族のこと──酒を酌み交わしながら話に花を咲かせている。けれど博多の屋台は、一人でも淋しくない。
「あまりお見かけしませんが、どちらから?」
 店主がほどよいタイミングで、声をかけてくる。周囲との輪に加わるきっかけをつくってくれるのだ。東京から、と私が答えると、予想どおり両隣の人が「ほう、東京から」と言ってクルッと身体を回転させる。
 仕事ですか? 滞在はいつまで? 話し相手を、こんどは私に定めたようだ。仲間をそっちのけでいいのだろうか、と心配になる。
 やがて、彼らの連れが席を立つ。ほら、私とばかり話しているから、先に帰っちゃうよ。ところが、別れ際に彼らはこんなやりとりを始めるのだ。
「じゃあ、お先に」
「あの、よろしければお名前だけでも」
 そこで私は気づく。酒を注ぎ合って話に熱中していた彼らも、じつは誰一人、知り合いだったわけではないことを。
 博多の夜は、いつだってそんなふうにして更けてゆく


S.Akimoto at 11:34│出会った人々 | 就航路線
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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