2015年08月04日

下町の話

 
この時期、毎週土曜日になると各地で花火大会が開催されます。今週末には東京湾でも恒例の大華火祭が予定され、晴海埠頭などは多くの人でにぎわうでしょう。東京の下町で育った私にとっては、最も馴染みの深いのが隅田川の花火大会。今年は7月25日に開催されました。


第一会場と第二会場を合わせ、計2万発が打ち上がる光景は圧巻です。ただし隅田川花火大会の欠点は、観賞する土手や河川敷がないこと。訪れた人たちの多くは、立ち止まることができず、ずっと歩き続けなければなりません。そんな中でこの日ばかりは最高の夜を過ごせるのが、隅田川沿いのマンションに暮す人たちです。

私の幼なじみである女流書道家の実家も、言問橋のふもとの隅田川沿いにあります。それも10階建てマンションの7階に。花火鑑賞にこれ以上のロケーションはありません。花火の日には毎年、私も招待されます。今年も私たち学生時代の仲間や彼女の妹の友だち、両親の知り合いなど30人近くが集まってベランダから見える花火を楽しみながら飲み食いに興じまた。ところでこのマンションでは、花火の日には来客が全員帰ったあと、ときどき騒動が持ち上がるのだとか。それは彼女の父親のこんなひと言から始まります。

「入口の近くで輪になっていた3人組は、お前の知りあいか?」
「え、違うよ。○○○(妹の名前)の友だちじゃないの」
「知らない。私の友だちじゃないよ」
「じゃあ誰なんだ。また知らないグループが入ってきてたのか」

オープンなのはいいのですが、滑稽なほど他人に無防備。多くの家庭が、ちょっと外出するときも寝るときも玄関にカギなどかけません。東京の下町とは、そういうところです。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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