2015年05月21日

17度線に立つ

 
今年はベトナムにとって、大きな節目となる年です。10年以上にわたって人々を苦しめたベトナム戦争が、1975年4月30日の「サイゴン(現ホーチミンシティ)陥落」で終結。あれからちょうど40年が経ちました。報道などでよく「統一から40年」という表記を見かけますが、正しくは「戦争終結から40年」で、南北ベトナムが統一されたのは翌76年の7月です。


あの戦争は世界が注目し、当時は日本からも現地の“真の姿”を伝えようと多くの報道カメラマンやジャーナリストが海を渡りました。戦火が広がりはじめたのは私が中学から高校へ進む頃でしたが、毎日のようにベトナム関連の記事やニュースに接し、国際報道への興味を掻き立てられたことを思い出します。「サイゴン陥落」を知ったのは高校3年生で、その年にヒットした「22歳の別れ」という平和なフォークの曲が部屋に流れていました。

先ほどfacebookにもアップしたご覧の写真は、かつて南北間の軍事境界線が置かれた非武装地帯──いわゆる「17度線」です。ベトナム中部を訪ねる今回の旅の途中で立ち寄り、ベンハイ川に架かるヒエルルオン橋を旧北側から南側に歩いて渡ってみました。この旅で出会ったベトナムの人たちのたくさんの笑顔を思い出しながら。

少しだけ気になるのは、この国の指導者たちが歴史を「勝者側の視点」でしか伝えようとしていないこと。悲惨な記憶はあえて後世に残すべきではない、という考えもあるのでしょうか。大国のエゴに苦しみ、犠牲を払わされてきた人たちが、どう困難を乗り越えて独立を勝ち得たのか? 笑顔の向こうに隠れた、そんな精神的支柱にも触れる旅ができたら、もっとよかったなと思います。この旅の報告は6月中にもどこかの媒体で詳しく書く予定です。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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