2014年11月09日

“トゥクトゥク”に乗っ

 
タクシーについて書いた前回に続いて、今日はバンコク市内のあちこちで見かける三輪バイク「トゥクトゥク」の話。タクシーに乗るときは「メーターを倒す、倒さないでいつももめて、いちいち交渉が面倒臭い」と報告しました。ですが、トゥクトゥクには最初からメーターなどありません。その都度、運転手との料金交渉が必要になります。


たいした距離ではないのに「200バーツね」とふっかけてくる質の悪い運転手がいる一方で、中には「30バーツいただければどこでも行きます」と笑顔を向ける気のよさそうなお兄さんも。30バーツは、日本円でわずか120円! こんなので商売になるのかなあと怪しんでいると、お兄さんは「いいから乗って、乗って」と急かします。まだ行き先も告げていないのに、大丈夫なの? すると彼は、席に着いた私に「お客さん、お土産屋さんに寄ってもいいですか?」と聞いてきました。

ほら、きたゾ。私が首を振って「ダメ。まっすぐBTS(高架鉄道)の駅まで行って」と言うと、彼は日本語が記された画用紙を私に提示しました。そこには、こう書かれています──「お土産屋さんにいっしょに行ってください。買わなくてもいいです。お客さんを連れていくと、お店からガソリンのクーポンがもらえます」。両手を合わせて懇願する彼に、仕方ないなあと思って「いいよ、少しだけなら」と私。彼は嬉しそうな顔で運転台にまたがりました。

着いたお店は、土産屋というより、どう見てもジュエリーショップです。黒スーツの男性に日本語で「イラシャイマセ」と声をかけられ、中に入ると、ショーウインドウに並ぶのは高価な指輪やネックレスなど。チラ見だけして5分で店を出ました。通りで待っていた同じトゥクトゥクに乗って、それから15分後に目的の駅に到着。約束の30バーツを払います。すると彼は「お土産屋に寄っていただいたので割引です」と10バーツのおつりを返してきたので、私が「いいよ、チップで」と言うと、嬉しそうに手を合わせて再びどこかへ去っていきました。

S.Akimoto at 23:54│アジア・太平洋の旅 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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