2014年10月12日

グリフィス天文台

 
LAの北東部、グリフィスパークのふもとの小高い丘に広がる落ち着いた雰囲気の街──ロスフェリッツ(Los Feliz)。その一角にあるアパートで、私は20代の前半に1年間暮らしました。住人が自由に使えるプールやビリヤード台とコインランドリーもある、ちょっぴり豪華なアパートだったことを思い出します。


学生時代に航空工学を学んだものの「モノを書く仕事に就きたい」という思いが強く、就職もせずに悶々とした日々を送っていた頃です。アルバイトでためたお金をもとに、LAへ。前回のBlogでも書いたように、それが私の海外放浪の始まりでした。ロスフェリッツのアパートを拠点に、格安で手に入れたシボレーを運転してあちこちを訪ねては、見聞きしたことを原稿に書いて日本の出版社(編集部)に送りつける。1年間、そんなことを繰り返しました。もちろん、素人から勝手に送られてきた文章など、採用してくれる編集部はありません。しかし帰国後、ある大手の編集者から呼び出しがかかり、言ってくれたのです──「ほかの編集部で新しい書き手を探している。そこでよければやってみるか?」と。私の「物書き」人生のスタートでした。

LAでの1年は、充実した、かけがえのない日々だったと思います。当時の自分にあったのは、何ら根拠のない自信だけ。何もかもうまくいかず、いたたまれない思いに心が占領されると、アパートのすぐ北側に広がるグリフィスパークの天文台に行って雄大な街の夜景を眺めながら「自分の悩みなんてまだまだ小さい」と言い聞かせて異国での生活を続けました。

今日の夕方、ロスフェリッツに足を伸ばしてかつて住んだアパートを探しましたが、もう当時の建物は壊されて新しい建物に変わっていました。日が落ちてきて、そのままクルマを進めてグリフィスパークの天文台へ。facebookにもアップした画像は、そこからの夜景です。思い出のアパートは無くなってしまっても、LAの街は当時のまま、変わらずに灯をともしています。「まだまだ頑張れる、あの頃だって頑張れたのだから」と思ったら、ちょっぴり目頭が熱くなりました。

S.Akimoto at 23:02│アメリカの旅 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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