2014年06月22日

隠語と符丁

 
あるテレビ局から連絡がありました。「秋本さんが紹介していた客室乗務員たちの“隠語”が面白いので、番組で取り上げたい」と。たしかに、何かの雑誌で「カラスフライト」とか「アメリカン」などCAたちが仲間同士の会話で使う一般の人にはわからない言葉について書いたことがあります。カラスフライトとは、黒の学生服を着たカラスのような集団という意味で、修学旅行の高校生たちが乗る予定の便のこと。アメリカンは濃くないコーヒー、つまり国内(こくない)線のことです。


え、くだらない? はい、本当にくだらないんです。私がそのことを“業界こぼれ話”として書いたのは、もう15年以上も前。いまは誰もそんな隠語は使いません。なので局の人には「時代錯誤と思われるのでやめてください」と丁重に断りました(笑)。

ところで、時代が変わっても残りつづける隠語もあります。隠語というより「符丁(ふちょう)」と書くべきでしょうか。つい先日、東京・向島の小料理屋のカウンターで飲んでいたときのことです。隣にいた男女の二人連れが席を立ち、男性のほうが「おいくら?」と聞くと、板前さんが小さな声で「へい、お一人さまメノジで」と言いました。これ、わかりますか? 漢字で「目」の字を書くと5画なので、「メノジ」といえば5,000円を指します。接待などで連れの人に値段を知られたくない場合のために、その商売でしか通用しない暗号のような言葉として符丁は生まれました。

同様な例をほかに挙げると、3は「ゲタ」(穴が三つだから)で、9は「キワ」(10のすぐ近くの意味)。4は「チムチョク」(置の文字の直が無い)です。なぜそんなことに詳しいのかって? 20代のころに向島界隈でかなり飲み歩き、そのときにいろいろ覚えました。向島、とてもいいところですよ。風情があって。一歩路地を入ると、芸妓さんたちがお座敷帰りにちょっと寄っていくようなカジュアルな店も少なくありません。そういう、古きよき時代の余韻が残る街だからこそ、符丁などもいまに受け継がれているのでしょう。CAたちが内輪だけで使う隠語などとは違って(笑)。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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