2014年03月04日

N700系新幹線の話

 
週末の空いた時間を利用して読んだ本が面白かったので、紹介します。タイトルは──『東海道新幹線/運転席へようこそ』。新潮文庫の書き下ろし企画として今年1月に刊行になりました。元東海道新幹線の運転士であり、現在は旅行をテーマにライター&写真家として活躍するにわあつしさんが書いています。


タイトルからわかるように、本書は読者を新幹線の運転台に招待してくれます。まずは35年前の東京駅から初代0系「ひかり」で出発し、懐かしいエピソードや裏話に耳を傾けながら新大阪駅へ。そして復路は、現在の新大阪駅から最新型のN700系「のぞみ」に乗車し、車両技術の変遷などに思いを馳せながら東京へ戻ります。読んでいて、私もかつて10年以上にわたり新幹線技術を取材してきた当時を思い出しました。

記憶によみがえった一人が、N700系車両の開発で台車と車体傾斜システムを担当したエンジニアのHさん。東海道新幹線はよくフランスやドイツの高速鉄道と「速さ」を比較されますが、もともとまっすぐなレール上を走ればいいように計画された仏独の車両と、起伏やカーブが多く人口が密集するエリアを走らなければならない日本の新幹線とは設計条件の過酷さが明らかに違います。Hさんらのチームは、従来はカーブで減速を余儀なくされていた車両の「速度向上」に挑みました。そのベースとなったのが、台車に採用した車体傾斜システムです。速度制限のかかるカーブで、車体がいまどういう高さでどんな状態にあるかを台車に設置したセンサが検知。精密な空気バネを連動させ、乗客にはカーブを通過していることをまったく感じさせない角度に車体を自動的に傾斜させる仕組みを完成させました。N700系車両の投入により、東京/大阪間の所要時間は短縮されてダイヤの過密化が実現したほか、従来型車両に比べて乗り心地も格段に向上しています。

説明が長くなりました。上記はほんの一例で、日本の新幹線には世界に誇る最先端テクノロジーがいろいろ詰まっています。その一つひとつを、約10年かけて取材した当時がとても懐かしい。『運転席へようこそ』を読み終えて、また鉄道技術の現場にも足を運びたくなりました。

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Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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