2013年09月17日

木曽路

 
台風接近のニュースを聞いて迷ったものの、思い切って出かけてよかったなと思っています。コロラド、ホノルルと続いたアメリカ取材をひとまず終えて先週末に帰国。来週からまた海外に飛ぶため、行くならこのチャンスしかありません。久しぶりのプライベートな国内旅行です。15日(日)は未明から土砂降り状態でしたが、支度して朝6時にクルマを出し、長野県の木曽を目指しました。


木曽路は、学生時代に歩いた思い出があります。私は理科系だったため、履修科目の中心は数学・物理や流体力学、材料力学などの工学系でしたが、なかには「文学」といった授業もあってかなり力を入れて取り組みました。一人ひとりが古典文学のテーマを決めて調査・研究し、発表を行うというユニークな内容だったからです。

そのテーマに私が選んだのが、木曽を舞台にした島崎藤村の『夜明け前』でした。文庫で1部、2部ともに上下刊の全4冊という大作で、それを読破して以来、いつかは自分の足で歩いてみたいと思っていた山あいの旧中山道。「木曽路はすべて山の中にある」という冒頭の文章そのままの景色の中、馬籠宿から妻籠宿までの9キロほどの道を、小説のモデルとなった藤村の父親が生きた時代に思いを馳せながら踏みしめたことを思い出します。

今回の旅で、当時の記憶がそのまま脳裏によみがえりました。先ほどfacebookに写真をアップしましたが、妻籠宿で訪ねた一つが、学生時代に泊まった宿「松代屋」です。外観も風情も、すべてがあの頃のまま。襖で仕切られただけの殺風景な部屋をあてがわれ、共同の風呂場は当時、ただ湯に浸かるだけで石鹸もシャンプーもいっさい使用禁止でした。いまはどうなのでしょう? 部屋にテレビも時計もないことに驚いていた私に、おかみさんが言った「長い生涯の一日か二日くらいは退屈を味わってみるのもいいもんよ」という言葉──いまも忘れません。

S.Akimoto at 18:52│オフタイム 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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