2013年03月06日

異界へのトンネル

 
10歳の少女、荻野千尋とその家族は、引越し先に向かう途中で森の中に迷いこみます。千尋たちの心配をよそに父親は「四輪駆動車だから大丈夫」とクルマを進め、やがて行き着いたのが奇妙なトンネルでした──。ご存知、宮崎駿アニメの大ヒット作『千と千尋の神隠し』の冒頭のシーンです。


不安を感じた千尋は「帰ろう」と両親を引き止めますが、両親は聞く耳を持ちません。好奇心からトンネルの中へ足を踏み入れます。千尋があとを追いかけると、トンネルの向こうに草原が広がり、やがてひっそりとした街にたどり着きました。屋台からは食欲をそしるいい匂いがただよい、空腹だった両親は八百万(やおよろず)の神の料理を食べたために、呪いをかけられて豚に! 物語は急展開し、そこから千尋の異界での不思議な体験が始まります。いま改めて全編を見返しても、ぐいぐい引き込まれる作品でした。

先月の終わりにLCCスクートの取材で台北を訪れた際に、この『千と千尋の神隠し』のモデルになったといわれる九份に足を伸ばしました。ご覧の写真は、冒頭とラストのシーンで出てくるトンネルです。千尋たちが最初にくぐったときは赤いモルタルづくりの建物でしたが、戻ってきたときは灰色に朽ち果てて、周囲に草木が生い茂り、時が何年も経過したように風化。魔法が解け、そこが異界への入口であった記憶も消え去ってしまいます。私が行ったときはずっと雨続きで、観光客らの姿もまったくありません。雨の中でぽっかりと口を開けたその先には、本当に異次元の世界が広がっているようで、同行のカメラマンとちょっとドキドキしながらトンネルをくぐりました。

帰国後の1週間はずっと原稿書きに追われていますが、ときどき筆を休めてそんなシーンを思い出すと、ついついまた旅に出たくなります。

S.Akimoto at 06:13│アジア・太平洋の旅 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

Logo_MakotoStyle_Tittle.jpg
Contact
仕事依頼などの相談・問い合わせはお気軽にどうぞ。当Blogへのご意見・ご感想もお待ちしています。下のフォームをクリックして画面を呼び出し、ご記入のうえ、送信してください。後ほど連絡させていただきます。

Form
Books














About Link
Blog『雲の上の書斎から』はリンクフリーです。必要に応じて以下のお好きなバナーをご使用ください。リンクされた場合は上記 Contact Formよりご一報いただけますと嬉しいです。