2013年01月19日

電源トラブル

 
ボーイング787関連の報道が加熱しています。18日も私は、結局多くの時間をテレビやラジオ、新聞の取材対応に割くことになりました。もちろん重大な事故ですし、その詳細を伝えることはとても重要ですが、一部に誤解を招くような内容も出てきているなと感じています。


787はこれまでとは違う、まったく新しいチャレンジでした。従来のアルミ合金に代わるカーボンファイバー複合材をボディや主翼の素材として多用。大胆な軽量化を実現した結果、燃費が20%も向上しています。素材を新しくしただけではありません。外見ではわからない、機体を構成するさまざまなパーツに軽量化・コンパクト化を求め、新開発の要素技術を細部にまで取り入れることで完成した旅客機なのです。

軽量化への取り組みの一環として、従来は油圧で機械式に動かしていた翼や舵、ブレーキなどを電気で動かす仕組みに変えました。その結果、使う電気の量は大幅に増え、787を「電気飛行機」などと呼ぶ人もいます。今回、ANA機でトラブルのあったバッテリーおよび周辺機器も大きく言えば電気システムの一つであり、私は「軽量化・コンパクト化への取り組みのなかで、無理をしてしまった部分に歪みが出てきていることも可能性の一つとして考えられる」と指摘しました。

しかし電気式に変えたといっても、フライト中に翼や舵、ブレーキなどを動かす電気は従来どおりエンジンで発電してまかなっています。そのため、搭載している発電機などもより強化されていて、今回の事故ではそこが壊れたわけではありません。「変色して電解液が漏れ、内部が炭化したように黒くなっていた」とされるのは、エンジンが止まっている駐機中や非常時に補助電源として使うバッテリーの部分です〔写真は国交省運輸安全委員会から公開されたメインバッテリー内部の様子〕。補助電源だから問題ないと言いたいわけではありませんが、上記の点を誤って解釈している報道も見られますので、今日もいくつかのテレビ番組の取材時に、また過去にインタビューを受けた新聞社の人たちにも連絡をとって改めて詳しく説明しました。

トラブルのあった787が緊急着陸した高松空港では、18日もANAが全面協力しての国交省運輸安全委員会による調査が進められました。その進捗状況などの報告は随時、現場のANA関係者からも届いています。不具合をすべて洗い出し、原因を徹底解明して、よみがえった“夢の飛行機”が再び世界の空に飛び立つのを待ちたいと思います。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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