2012年11月09日

南回りと北回り

 
日本からヨーロッパへは、直行便だと11時間か12時間でアクセスできます。けれども航空の長い歴史で見ると、こんなに近くなったのはつい最近の話。かつては欧州のどの国に行くにも50時間以上を要していました。現在と違って、まだ南回りのルートしかなかった時代のことです。当時はなぜ、わざわざ南回りでフライトしていたのでしょうか。


理由のひとつは、航空機の性能にあります。どの機種も当時はまだ航続距離が短く、途中多くの経由地に立ち寄らないと目的地へたどり着けませんでした。また極地上空を安全に飛行するための航法技術が未発達だったというのも、南回りルートで飛行を続けた要因の一つです。そういう状況を打破し、初めて「北極ルート」を開拓したのがスカンジナビア航空(SAS)でした。

北欧を拠点とするSASにとって、世界に翼を広げるには高緯度地域ネットワークの拡充が不可だったのでしょう。だからSASの技術者たちは、新しい航法技術の研究に早くから力を注いできました。北欧特有の薄暮の季節には太陽や星に頼る従来航法がまったく通用しない、北極圏では磁石が用をなさないといった技術的課題を、彼らは一つひとつ克服していったのです。そうしてついに、SASは東京/コペンハーゲン間で世界初となる北極ルートを開設しました。

そこにいたるまでには、想像をはるかに超える苦労があったのだろうな。先ごろ私は成田からSK984便でコペンハーゲンへ飛び、パイオニアたちが活躍した時代のことを機内で考えていました〔写真は成田線で運航中のエアバスA340=チャーリィ古庄氏撮影〕。そのときのことを思い出しながら、今朝からSASに関する文章を書き始めています。日曜日までに書き上げ、週明けには写真を添えて編集部に送る予定。誠Styleの連載『“飛行機と空と旅”の話』で来週後半には発表できると思います。

S.Akimoto at 23:20│世界のエアライン | 就航路線
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『これだけは知りたい旅客機の疑問100』『ボーイング787まるごと解説』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)や『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)など著書多数。

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