2012年09月12日

リスボン点描

 
中心街を離れると、リスボンはすぐに上り坂が始まります。道行く人たちといっしょに坂道を上っていくのは、市電の28番線〔写真〕。乗ってしまえば楽そうだけど、私とカメラマンは街の撮影があるので、頑張って歩くことにしました。


古い教会が見えてきました。教会を越えると、どんどん狭い路地に入っていきます。やがてその先に「Alfama(アルファマ)」という文字。リスボンで最も古いこの一帯の地名です。道幅が本当に狭いので、市電が通るときは壁にへばりつくようにして除けなければなりません。電車の窓からは、乗客たちが身を乗り出してカメラを構えています。乗っている人のほとんどは観光客なのでしょう。反対に坂道を歩いているのは、地元の人たち。目の前を、若い人も老人も、ゆっくりゆっくり上っていきます。

「こんなに狭い場所でドライブするんじゃないよ!」

電車のあとに入ってきたクルマに向かって、買い物カゴを下げたおばさんが怒鳴りました。ずいぶん威勢がいい。市電はリスボンの名物なので受け入れても、排気ガスをまき散らすクルマには我慢できないのでしょうか。

ふと、あることに気づきました。老人たちは、坂をまっすぐには歩きません。右の壁から左の壁へ、反対に左から右へ、ジグザグに歩きながら少しずつ坂を上っていきます。山を登るときの歩き方と似ているな、と思いました。それでも疲れたら、荷物を置いて民家の敷居に腰をかけてひと休み。リスボンでは、誰もが自分のペースで暮らしているようです。

S.Akimoto at 23:48│ヨーロッパの旅 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

Logo_MakotoStyle_Tittle.jpg
 
Contact

仕事依頼や相談・問い合わせは以下よりお気軽にどうぞ。のちほど連絡させていただきます。     ◇  ◇  ◇

名前
メール
本文
Books