2011年11月07日

ケーブルカーに乗って

 
海外を歩いた思い出が時間の経過とともに少しずつ薄れてしまうのは、ある意味で仕方ありません。そんなときは現地で撮影した写真を見て、その街の空気の匂いとともに記憶をよみがえらせます。週末の日曜日はあいにくの雨で、地元で予定していたソフトボールの試合も中止に。で、書斎でのんびり、過去の写真の整理をしながらタイムトリップして過ごしました。


私が海外で撮影した写真には、かなり高い確率で路面電車が出てきます。路面電車が好きなのは、東京の下町の、いまも都電が走っている街で生まれ育ったせいかも知れません。ちょうど1カ月前に訪れたサンフランシスコの写真にも、街の風物詩であるケーブルカーがたくさん写っていました。

半島に突き出た急坂の多い街なかを、ケーブルカーは我が物顔で行き来します。路線は、マーケットストリートとパウエルストリートの交差点を出発して半島突端のベイエリアまでを南北に結ぶパウエル/ハイド線とパウエル/メイソン線、そして街の中心部を東西に横切るカリフォルニア線の3つ。私がよく使うのは、チャイナタウンやノブヒル、フィッシャーマンズワーフなどのエリアをカバーしているパウエル系統の2路線です。使い勝手のいいルートだけにいつも混んでいて、今回も20分ほど並んで乗りました。

始発駅の回転場で人に押されてくるっと向きを変えたケーブルカーに乗り込むと、両サイドをビル群に挟まれたパウエルストリートの坂道をぐいぐい登っていきます。地中を這う動力のケーブル音を、常にゴウゴウと響かせながら。車内からの景色を切り取った1枚が上の写真です。出発地のマーケットストリートは見る見る遠ざかっていくのに、坂道はまだ先まで続きます。やがて坂の頂点に到達すると視界が一気に開け、カラフルなチャイナタウンの街並みの向こうにあざやかなブルーの海が広がりました。

このあと、ロンバートストリート駅で下車し、フィッシャーマンズワーフまで歩いて向かったんだっけな。フィッシャーマンズワーフでは、クラムチャウダーが本当においしかった! そんな記憶をよみがえらせながら、写真の整理を進めた日曜日。また時間をつくって、ケーブルカーに乗りにいこうと思います。

S.Akimoto at 05:03│アメリカの旅 | オフタイム
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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