2011年09月11日

10年前のあの日

 
信じられない事件でした。多数の民間人を乗せた旅客機で高層ビルが爆破・破壊される──そんなことは、誰も予想もしなかったに違いありません。最初のニュース映像が届いたのは、ちょうどテレビで報道番組を観ていたときです。目の前の現実の出来事を、すぐには理解できませんでした。


ニューヨークのワールドトレードセンターに突入した2機は、いずれもボーイング767です。767は双発セミワイドボディ機という、それまでにない新しいカテゴリで登場した機種で、コクピットにはデジタル・アビオニクスが採用されました。飛行に必要なデータは従来型の計器類に代わって6面のCRTで表示。飛行コースや高度・速度の維持、滑走路への進入までをコンピュータによる自動操縦で行います。しかし自動操縦といっても、それは誘導電波や管制塔の支援があってはじめて可能になるもので、林立する高層ビルの間を手動操縦で飛ぶなどという芸当は相当な訓練と経験がなければできません。

2機目がタワーに激突した瞬間はCNNがライブ中継していました。私は繰り返しその映像を眺め、当時まだ「報道」の分野では活用が進んでいなかったWeb媒体に、どのメディアよりも早く送ったのが以下の第一報です。

 ユナイテッド航空175便は機体を30度ほど左に傾けて画面に現れ、バンク角をさらに深くしながら真っ直ぐに“標的”に突入している。バンク角を深めながら高度を下げる操縦法は、じつは戦闘機によく見られる方法だ。操縦桿を握っていたのはおそらく犯人グループの一人に間違いない。これは極めて精密な作戦と周到な準備の上に成立しているテロ行為だろう。
 精密な作戦と周到な準備は、ボストン空港を飛び立ってから短時間で目的を完遂させている点からも読み取れる。旅客機に積む燃料は、着陸時にはほとんどを使い切っているが、反対に離陸直後はまだ満タンに近い。飛び立ってからできるだけ早くビルに激突させたほうが爆発・炎上の威力も増すわけで、そうした行動の裏にも私は計画の残虐さを感じるのだ。


ちょうどいま日付が変わり、10年目の“9・11”を迎えました。何年経っても、あの日の記憶は薄れるどころか、鮮明に脳裏にはりついています。人と人とをつなぎ出会いを演出する、まさに平和の象徴であるべき旅客機が、残虐なテロ行為の凶器に使われる。そんなことが今後、未来永劫、二度とあってはなりません。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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