2010年08月12日

滑った客室乗務員

 
その“事件”は今週月曜日に起きました。アメリカのピッツバーグからニューヨークのJ・F・ケネディ空港に到着したジェットブルー航空1052便の機内でのことです〔写真はイメージ〕。機体が完全に停止する前に頭上のラックから荷物を降ろそうとした女性客を、客室乗務員のスティーブン・スレーター氏が注意してやめさせようとしたところ、その荷物が滑り落ちて彼の頭を直撃。スレーター氏は乗客に謝罪を求めましたが、逆にののしられたことで、彼の堪忍袋の緒は完全に切れてしまいました。


スレーター氏は機内アナウンス用のマイクでこの乗客への不平不満をわめき散らしてから、「もううんざりだ、やめてやる!」と言い放ってギャレーへ。そこで機内サービス用の缶ビール1本をつかみとると、非常口に設置されている緊急脱出用スライドシュートを作動させ、機内から滑り降りてそのまま帰ってしまったのです。

警察はその後、自宅に戻っていたスレーター氏を「危険行為」などを理由に逮捕しましたが、機内でのマナー悪化を不満に思う同業者からは彼を同情する次のような声が絶えません。

「乗客から罵倒されたことなんて、何万回もあるよ」
「客室乗務員は、乗客の手下くらいにしか思われてない」
「私なんか、乗客から平手打ちをくらわされたわ」

客室乗務員の指示には、乗客は必ず従わなければなりません。ネット上ではスレーター氏の行動を「よくやった!」と支持する声も集まっているようですが、現場で問題が起きたときには放置せず、そのつど報告を上げてきちんと対処すべきでしょう。溜め込んだ不満を爆発させて職場を放棄し、脱出用スライドシュートで逃走するなどという行為はもってのほかです。客室乗務員一人ひとりは、機内の安全を守る“保安要員”としての任務も負っているのですから。

警察の調べに対しスレーター氏は「一度、実際にスライドシュートを試してみたかった」と語ったそうです。アメリカ国内では、早くも「I slide(私は滑る)」という文字がプリントされたTシャツが売られているという話を聞きました。これについては、う〜ん、私は何もコメントしようがありません。ヘンな国。

S.Akimoto at 10:58│航空機 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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