2010年07月19日

ANAの人材観

 
今日は、客室乗務員の採用に関しての話を少々──。ANAはこの春に実施した約200名の新卒採用につづいて、先週新たに150人の既卒者募集を発表しました。一方のJALが再生に向けて事業縮小を進めるなか、名実ともに日本のフラッグキャリアを目指したANAの人事戦略が始まったと見ていいでしょう〔写真は出発前の客室乗務員のブリーフィング風景=成田のANAスカイセンターで撮影〕。


採用試験にパスして新人訓練を終了すると、ANAでは1年契約の客室乗務員として乗務が始まります。契約は2回(3年)を限度に更新が可能で、3年が経過すると、本人の希望と適性・勤務実績などを踏まえて長期雇用社員として再契約。その契約時には過去3年間の勤務態度などが考慮されますが、先日私が会った人事担当のKさんは「よほどの理由がないかぎり、ほぼ100%の確率で長期雇用の客室乗務員に転換していきますよ」と話していました。

女性社員に少しでも長く働いてもらえる会社にしたい──そんな思いからANAではここ数年、産休・育休制度をはじめとする組織改革に取り組んできました。産休や育休明けの社員が本人の希望で休みの日数を選択できる新制度もスタートしています。従来は、1カ月のうち勤務日が20日間と決まっていました。その勤務日を、新制度では75%の15日に減らしたり、50%にしたりということも可能に。それぞれのライフスタイルに合わせた働き方をできるようにすることで、家庭と仕事をより両立しやすくしたのです。

そんな取り組みの背景には、ANAの「社員一人ひとりの経験こそが会社の財産である」という考え方があります。客室乗務員はまさに機内サービスのスペシャリストであり、実際のフライトでどれだけ多くの経験を積み重ねてきたかでサービスにおけるスキルやセンスに大きく差が出てしまう。乗客の安全を守る「保安要員」としての役割にも、やはり経験が不可欠です。人事担当のKさんは、私とのインタビューの中でこんなことも言っていました──。

「ベテラン社員の経験を社内に蓄積していくことが、ANAの強みになるはずです。やがて会社を辞めることになっても、ANAでのそれまでの経験をいろんな世界で生かしていってほしい。さまざまな分野で活躍する人の中に“ANA出身”という経歴を見かけるようになれば、ANAの評価もますます上がっていくでしょうから」

Profile

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秋本俊二(Shunji Akimoto)
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『ボーイング787まるごと解説』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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