2010年06月21日

教会の鐘・夜の色

 
プラハでは一日に何回か、街のあちこちで教会の鐘の音が鳴り響きます。頭上から降ってくるその音色が耳にとても心地よく、毎朝近くの教会の鐘の音で目覚めるのが日課になっている人も少なくないと聞きました。


ホテルの部屋で夕方の鐘の音を聞いていたら、再び街に繰り出したくなりました。昼から夜に切り替わる時間帯のプラハは、とくに幻想的です。ほとんどの建物が輪郭を失いはじめるとライトアップされる、プラハ城とカレル橋〔写真〕。その下で、ヴルタヴァ川に浮かぶ船が遠慮がちに光を発し、100年前のガス灯と同じデザインの街灯が路地や石畳をほんのりオレンジ色に照らします。一国の首都でありながら、これほど控えめな色と光に演出された街を、私はほかに知りません。

足を止めて、石の壁にもたれかかりました。通りに沿って点々と続く街灯の周辺だけが、ぼんやりした丸い光に包まれています。

ここは、どこだっけ?
あれ。いまは、いつだっけ?

そんな疑問がふと脳裏をよぎり、心をからっぽにしたまま石畳の道をまた歩き始めます。街灯のか細い灯りだけを頼りに、どこまでも。建物の壁に刻まれた彫刻が現れては消え、2010年の現在から歴史の中のプラハへどんどん迷い込んでいくような錯覚におちいりました。

S.Akimoto at 13:29│ヨーロッパの旅 
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秋本俊二(Shunji Akimoto)
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『ボーイング787まるごと解説』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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