2010年05月23日

赤いバラのもてなし

 
予定していたすべての取材を終え、帰国しました。フランクフルトからは、ワケあってファーストクラスでのフライトで。ルフトハンザが成田線で運航しているボーイング747-400では、ファーストクラスはアッパーデッキ(2階席)にあって、中央の通路をはさんで2席ずつのシートが4列──計16席がレイアウトされています。


ルフトハンザはファーストクラスの客室を今回のエアバスA380の1号機受領に合わせてフル・モデルチェンジする計画を進めていたため、現状の747-400に搭載されているシートはもう古く、決して豪華とは言えません。発表されたA380の新シートに比べると、実際のところかなり見劣りします。

ただし、見劣りするのはあくまでハード面に関してのこと。“人”が介在するソフト面のサービスは話が別です。ベタベタせず、しかし必要なときはいつでも近くにいてくれる──その何ともいえない距離感が心地よく、私はいかにもルフトハンザらしいと感じました。

たとえば、搭乗してシートに着くと、通路側の肘掛けの先端に直径3センチ/深さ10センチほどの小さな穴が開いていることに気づきます。私の斜め向かいに座ったスイス人のカップルは「これ、何だろう?」と首をかしげていました。ほどなくして、それぞれの席に担当の客室乗務員が挨拶にきます。「担当の○○です。ご用がございましたら、いつでも遠慮なくお申しつけくださいね」と言って、肘掛けの穴に差していったのは、一輪の赤いバラでした〔写真〕。乗客との間に保たれる絶妙な距離感と、そのさりげない一輪のバラの花は、どこか共通しているように私は思います。

フライトの途中、私を担当してくれた日本人客室乗務員の森素子さんと、今回発表された新しいファーストクラスの話になりました。

「私たちはまだ見ていないのですが、オープンな空間を演出した新しいファーストシートはとても素晴らしいと聞きました」と、森さんは言います。「最近は個室タイプが流行のようですが、ルフトハンザはたくさんの方々にアンケート調査を実施したところ、密閉された空間よりもオープンな空間をお客さまは望んでいるという結果を得たようです。オープンなぶん、私たち客室乗務員もお客さまとのコミュニケーションがとりやすいですし、シートだけでなくソフト面でもお客さまにご満足いただける対応ができるよう私たちももっともっと努力を続けていかなければと思っています」

一輪の赤いバラは、ハンブルグからフランクフルトへのA380のデリバリーフライトでも見かけました。ファーストクラスの座席や、トイレの中などで。ルフトハンザのさりげないもてなしは新機材でも継続されます。その1号機が就航する成田/フランクフルト線も私は搭乗取材する予定ですので、報告を楽しみにお待ちください。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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