2009年03月08日

可笑しくて悲しい物語

 
日曜日ですが、早くに目が覚めました。窓を開けると、外はどんより曇り空。散歩に出る気分でもなれず、午後のアポイントの時間まで、のんびりDVDを見て過ごすことにしました。


棚から引っぱり出したDVDは、フランスで1993に制作されたフィリップ・リオレ監督作品『パリ空港の人々』〔写真〕。何らかの理由で入国を許可されなかった人たちが留め置かれる国際空港のトランジットゾーンを舞台にした映画です。

主人公アルチュロ(ジャン・ロシュフォール)は、出発地のモントリオール空港でパスポートも財布もいっさいを盗まれてしまい、唯一残っていた搭乗券でパリまでやってきます。入国審査官に「所持品はぜんぶ盗まれたんだ」と裸足で食ってかかりますが、相手は冷たく「ノン」。トランジットゾーンに連れていかれ、足止めされてしまいます。そしてそこには、同じようにさまざまな事情で留置されている男女数人が生活していました。

ここでもう5年も暮らしているという国籍不明で哲学者ふうの男。出稼ぎに出た父親を追ってはるばるフランスまで来てしまったアフリカ人の少年……。彼らはじつに不思議な人たちで、長く生活しているためセキュリティの甘い部分を知りつくし、まるで自分の庭のように空港内を歩き回ります。滑走路付近に棲息している野ウサギをつかまえ、空港の職員食堂の厨房に持ち込んでコックに売りつけるシーンは、知っていても笑いをこらえることができません。

ここまで書くと、ある作品を思い出しませんか? そう、トム・ハンクス主演で2004年に制作されたスティーヴン・スピルバーグ監督の『ターミナル』。あの映画は、間違いなく『パリ空港の人々』がアイデアの元になっています。まだ観ていない人たちのためにこれ以上のタネ明かしはしませんが、最初は可笑しく、やがて悲しさが染みわたってくるようなじつに奇妙な味わいをもつ作品です。

S.Akimoto at 11:57│書籍・読書 | エアポート
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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