2009年03月02日

あいまいな管制英語

 
関西国際空港で2007年10月、エアカナダ機が管制官の許可を得ずに滑走路に進入し、降下中だったJAL機が着陸をやり直すといトラブルが発生。この一件について運輸安全委員会は「管制官の指示をカナダ機が聞き間違えたうえに、誤った復唱内容に管制官が気づかなかったことが原因」とする調査報告書を公表しました〔写真はエアカナダが運航するボーイング767-300〕。


トラブルが起きたのは同年10月20日午後6時過ぎでした。管制塔からはまず降下中のJAL機に着陸許可を出し、カナダ機には「Hold short of runway(滑走路手前で待機)」と指示。それをカナダ機の副操縦士は滑走路に入る許可を得たと勘違いし「To position」と復唱。「To position」は「Taxi to position(滑走路に入って待機)」を略した表現でしたが、管制官は「To」を「Hold」と聞き違え「Hold position(現在位置で待機)」と復唱したと思い込んだそうです。

ご存知のように、管制官とパイロットのやりとりは必ず英語で行われます。世界のどの空港へ行ってもこれは例外ではありません。ところが、この英語のよるコミュニケーションが、じつは大きな危険をはらんでいます。

1977年3月、カナリー諸島のロスロデオス空港で、乗客乗員583名が命を落とす史上最大の航空機事故が発生しました。その一因になったのが、“at take-off”という言葉に対する誤解です。コクピットクルーはそれを「われわれは離陸中」という意味で使い、タワーの管制官は「離陸位置にいる」と理解しました。1981年2月にはカリフォルニア州ジョン・ウェイン空港で、“hold”という動詞の意味の誤解から事故が起きています。航空用語の“hold”は「その動作を中止しろ」という意味で用いますが、一般には「動作を続けろ」の意味に。音声によるコミュニケーションは手軽で便利な反面、あいまいさや意味の不明確さが起因するトラブルにはきちんと目を向けていく必要があるでしょう。

ちなみに国土交通省は昨年、航空機事故と、事故につながる恐れのあった空の「安全上のトラブル」が2007年には730件あったと発表しました。

S.Akimoto at 09:54│航空機 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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