2008年09月11日

癒えない哀しみ

 
あの“米国同時多発テロ”から、今日で丸7年です。ニューヨークのワールドトレードセンターに飛行機が突っ込んだらしい。その第一報を聞いたのは、2001年9月11日の夜10時過ぎ(日本時間)。私は「まさか!」という思いで、続報を待ちました。間もなく炎上する同センターの第1タワーの様子がテレビ画面に映し出され、やがて第2タワーに2機目が激突する瞬間をCNNのカメラがライブでとらえたのです〔写真はその前年に訪ねた、在りし日のワールドトレードセンター〕。


突入した2機は、いずれもボーイング767でした。767はデジタルアビオニクスが採用された、当時のハイテク機。コクピットでは従来型計器に代わり必要な情報は6面のCRTに表示され、飛行コースや高度、速度の維持から滑走路への進入、着陸までをコンピュータが自動で行うことができる機種です。

しかし自動操縦といっても、それは誘導電波や管制塔の支援があって、はじめて可能になるもの。ビルとビルの間を手動操作で飛ぶには、相当な訓練と経験が必要です。私はCNNの映像を繰り返し確認してから、日本時間の深夜に、どこよりも早く次のような解説記事を書いてある媒体に送稿しました。

「ユナイテッド航空175便は機体を30度ほど左に傾けて画面に現れ、バンク角をさらに深くしながら真っ直ぐに“標的”に突入している。操縦桿を握っていたのはおそらくコクピットクルーではない。バンク角を深めながら高度を下げる操縦法は、じつは戦闘機によく見られるもの。操縦していたのはハイジャック犯グループの一人に間違いない。しかもこれは、極めて精密な作戦と周到な準備の上に成立しているテロ行為だと予想される」

その後、翌日の明け方にかけて、事件の全貌が明らかになっていきます。そして私の解説記事が間違いではなかったことを知り、どうしようもない哀しさと悔しさに支配されました。国と国、民族と民族、思想と思想がぶつかりあって、世界各地で紛争が絶えません。しかし双方の人と人とが直接会い、手をとって言葉を交わし触れあうことで、争いもいつかはきっと解決に向かうはず──そんな思いが私にはあり、旅客機やエアラインはその“掛け橋”として世界平和の重要な一翼を担うものだと考えていたからです。

その旅客機がテロ行為の凶器に使われたあの日──“9.11”を、私は忘れません。毎年この日を迎えるたびに、決して癒えることのない哀しみと悔しさを、私なりに文章につづりつづけていきたいと思っています。

S.Akimoto at 14:30│航空機 
Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『空を飛べるのはなぜか』『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(サイエンスアイ新書)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『ANAとJAL──こんな違いがあったのか』『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE 夢文庫)など著書多数。

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