2008年09月08日

廃棄部品のオーケストラ

 
新しい部品との交換作業が終わり、あとは廃棄されるのを待つだけになった古いエンジン部品。それをじっと眺めながら、JALのベテラン整備士Sさんは考えました。ジャンボ機の重要な一部としてずっと頑張ってきてくれたこのパーツに、何とかもう一度生命を吹き込んでやることはできないものか──と。


そうしてSさんが専門とする溶接技術を駆使して完成させたのが、これです〔写真〕。取り外された古いエンジンブレードなどでつくった、メタル製のオーケストラ人形。今日の昼間、取材で成田空港に隣接するJALのエンジン整備工場を訪ねたとき、入口を入ったところのロビーに飾ってありました。

オーケストラ人形は、トロンボーン、サックス、ベース、ピアノ、バイオリン、フルートなどのパートにきちんと分かれています。それぞれの胴体部分は耐熱合金製エンジン部品で、頭部にはベアリングを、足にはボルトを使って接合しました。奏者たちが乗っている台は、回転部分を扇形に切ってつくったタービンブレードです。作者の柔軟な発想と感性がうかがえますね。

旅客機のジェットエンジンは、その可動部分のほとんどが消耗品です。定期点検でほんのわずかでも亀裂などが見つかれば、すぐに交換しなければなりません。しかし、それらはチタンなどでつくられていて、一つひとつがとての高価。ジャンボ機とともに長年歩んできたSさんにとっては、たとえ古くなっても愛着があり、そのまま廃棄するのは忍びなかったのでしょう。

完成したオーケストラ人形は現在、JALグループの機内通販などで一般向けにも販売されています。一つひとつをハンドメイドで仕上げるため、20万円(5体セット)〜30万円(8体セット)とちょっぴり高価ですが。

Profile

秋本俊二(Shunji Akimoto)

作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各媒体にレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『飛行機はなぜ、空中衝突しないのか?』(KAWADE夢文庫)『羽田空港のひみつ』(PHP新書)『これだけは知りたい旅客機の疑問100』(SBクリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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